不連続ダイテックス小説「ののちゃん」 ~ 第0話 ~　入社を決めた理由

第1話はこちら。

これは、ダイテックスに所属するエンジニア野々村京太郎がダイテックスに入社するまでを紹介する物語である。
某人気ドラマや小説のように、特に伏線があるわけではないので回収することもなく、なにか酷いことをされるわけではないので倍返しすることもない。まだ１話しか公開していないのに、エピソード0的なことをやってしまう始末。
更に言うと、タイトルの「ののちゃん」とは一度も呼ばれたことがない。

そんな野々村の学生時代について、簡単に紹介しておこう。
野々村は工業高等専門学校「生産システム工学科」に一般入試で合格して入学。部活は「剣道部」と「軽音部」に所属。アルバイトは某ファミリーレストランでキッチンを3年半ほど担当。授業に部活にアルバイトに、そこそこ忙しい学生生活を送っていた。

ある日、野々村京太郎は落ち込んでいた。
高専5年生。大学への進学は考えていなかったので、就職活動真っ只中。
周りの友人たちは少しずつ就職先が決まっていく中、野々村は就職試験に落ち続けていた。
「ああ、ここもダメだったかぁ。次どうしようかなぁ…。」

「6番テーブルのポテトフライおねがいしまーす…」
「はいよ。6番じゃなくて８番だぞ。あと一緒にコーンスープも出せ。」
「あ…はい。すみません、これ、お願いします」
アルバイト先のファミリーレストラン社員である中橋が、接客の合間にキッチンの野々村に話しかけた。
「なんだ京太郎、元気ないな」
「中橋マネージャー…、また就職試験落ちちゃいましたよー」
「そういうことか。お前見込みあるから、行く当てなかったらうちに入れてやるよ。わははは！」
「見込みあるなら時給あげてくださいよ！」

野々村は、ファミリーレストランのバイト経験から食品や飲料系の企業に絞っていた。
「安心安全をモットーにしているところに惹かれ…」とか「お客様がおいしそうに食べていることに感動して…」とかを志望動機に書いた。なんとなく書きやすかったからだ。
「このまま落ち続けたらマネージャーにお願いしようかな…」と野々村は考えた。

ジャカジャーン…「今のよかったね。ちょっと休憩しようか」
「ケンちゃん就職決まったの？」野々村がドラムのKENに聞いた。
「決まった決まった！建築関係な。ヒロくんは？」ベースでリーダーのHIROに聞いた。
「決まったよー。自動車部品作るところねー。旋盤ぶん回したいんだよね。ダイちゃんも？」ギターのDAIに聞いた。
「俺はね、ほぼ決まりの最終面接だけ。IT企業。時代はITだよ諸君。キョウちゃんは？」ボーカルギターのKYOに聞いた。
「ミンナイイネ…ワタシハマタオチマシタ…。ナグサメテクダサイ…」
「…あと1曲やって帰ろう！ラーメン食って帰ろう！キョウちゃん分みんなで割り勘してやんよ！」
「ありがとー！ヤサイニンニクマシマシでお願いします！」

なんだかかっこよく書いたが、ジャンルバラバラのコピーバンドである。

野々村は、とぼとぼと高専の就職指導室へと向かっていた。
「深松先生、どこかいいところないですかねぇ」野々村は求人票をめくりながら、深松に聞いた。

深松はあごひげをなでながら「さっきダイテックスっていう会社の採用担当が来てな。3DCADやってるところ。野々村が狙ってる食品関係じゃないけどね」
「3DCAD…？？授業でやったの一瞬でしたけど、大丈夫ですかね？」
「うちは教育体制整ってますんで！って言ってたぞ。興味ある子いればまずは会社訪問でもって。」
「わかりましたー、じゃあとりあえずお願いしまーす。」業務内容、初任給や勤務地を簡単に目を通し、行くだけ行ってみることにした。

「高輪橋工業高等専門学校より参りました、野々村です！本日会社訪問で参りました！」乗り気ではないものの、挨拶だけは元気よく。
「ああ、いらっしゃい。担当の平根です。ささ、どうぞこちらへ」　ロマンスグレーで品のある男性が名乗り、野々村を個室に招いた。
「改めて…ダイテックスの平根です。お時間とってもらってありがとうございます。今日は堅苦しくなくざっくばらんに、会社説明みたいな感じで進めたいと思います。」
「はい、宜しくお願い致します。」
「えー、じゃあまずうちの会社は……」平根はパンフレットを差し出し、ダイテックスの沿革、従業員規模、取引先企業など概要の説明を始め、野々村はメモを取りながら聞いた。
「入社後はね、製図や材料力学の基礎や、3DCADの教育をみっちり6か月やってから、業務に入ります。」
「え！？6か月もですか！長いですね。」野々村は驚いた。長くても3か月か、くらいを予想していた。
「そりゃそうだよ野々村さん。うちは3DCADのプロフェッショナル集団ですからね。新入社員だとしても、どこ出しても恥ずかしくない一人前に育ててから仕事が始まります。」
「3DCADのプロフェッショナル…、私にもなれますかね？授業で少し習いましたが、難しくて自分の思い通りにモデルを作成できませんでした…」
「なれますとも！3DCAD専門の先生がいますから、しっかり学べば野々村さんもプロフェッショナルになれます！」平根は立ち上がり力強く言った。
「とまあ、説明はこれくらいにして現場も少し見てもらいましょうかねぇ」

平根が野々村を20人ほどがPCの前で作業している部屋に連れてきた。「ここが3DCADを使ってる設計部です。」
1人の従業員が野々村たちに気が付いて声をあげた。「あー、説明会くるって言ってた子かあ。いいじゃん平根さん、明日から来てもらえば。」
「なに言ってんだ杉本、まだ学生さんだぞ。しっかり卒業してもらってからな。今それやってるのちょっと見せてやってくれよ」
「かしこまりましたー。これはね、クルマのエンジンのシリンダーヘッドという部品で…」と杉本がCADの画面を見せながら詳しく説明してくれた。
細部まで作り込まれた3DCADデータは、本物かと見間違えるほどの美しいものであったことに野々村は感動していた。
「3Dモデルも作るし、図面も書くし、解析もするし、設計もする。うちに入ればいろいろなことが経験できるよ。」杉本が目を輝かせながらそう言った。

「本日は説明頂きありがとうございました。」
「こちらこそ、わざわざ来てもらって、ありがとうございました。ご縁があれば、採用試験に進んでもらって…。深松先生によろしくお伝えください。」
「はい！それでは失礼致します。」

野々村は駅に向かいながら「みんないい人そうで、アットホームな会社だったなぁ。ここならいいかもしれない…。ダイテックスを受けてみよう。
3DCADのプロフェッショナルに、俺はなる……！！！！！」
そう心に誓ったのであった。

完

機械設計・CADアウトソーシング事業 ～ エンジニア派遣／請負／委託 ～