これは、ダイテックスに所属するエンジニア野々村のとある日の業務内容について、淡々と紹介していく物語である。
某人気ドラマのように、特に伏線があるわけではないので回収することもなく、
なにか酷いことをされるわけではないので倍返しすることもない。
更に言うと、タイトルの「ののちゃん」と一度も呼ばれたことがない。
そんな野々村について、簡単に紹介しておこう。
野々村はダイテックスに新卒で入社し、半年間の研修の後に自動車メーカーのエンジン部に派遣された。
Creoという3D-CADを使い、エンジンのありとあらゆる部品をモデリングする部署に配属となった。
ある日野々村京太郎は、歓喜した。
3Dモデリングを担当したエンジンカバーの実物が、目の前に現れたからであるーーー。
遡ること半年前、野々村が属するモデリングチームのリーダーであり上司でもある篠原から、新しいモデリング業務の依頼が来た。
「京ちゃん、エンジンカバーのモデリングがあるからやってみようか」
「やります!どういった要件があるんですか?」
「デザイン部がCreo以外のCADで作成した意匠面のサーフェスデータがあるから、
その面をオフセットして肉付けをするっていうのがメインだね。まずは設計者の加藤と打合せをしよう」
「なんだか難しそうですが、頑張ります!」
篠原と野々村、エンジンカバーの設計者である加藤とモデリングに関する打合せを行っていた。
納期、要件、注意事項をひとつひとつ丁寧に確認した。
そして打合せの最後に加藤はこう言った。
「エンジンカバーは、ボンネットを開けたとき、まず目に飛び込んでくるものです。かっこよくお願いします!」
「はい!こちらこそ!よろしくお願いします!」
こうして野々村はエンジンカバーのモデリングに取り組んでいった。
モデリングをしていく中で、野々村はある問題に直面した。
オフセットした面同士をマージしてできたエッジに、どうしてもラウンドを作成できなかったのである。
そこで野々村は、同期の浜崎に助けを求めた。浜崎は同期ではあるものの、一足早く派遣されていたので先輩と言えば先輩なのだ。
「浜ちゃーん、ここにラウンドができなくて・・・」
「あ~こういうのは、こうすれば…できないか。じゃあこうすれば…できたできた!
フィーチャーの順番を変えたり、大きいラウンドのあと小さいラウンドを付けたりするとできるよ」
「ありがとう浜ちゃん!勉強になりました」
野々村はそれから没頭してモデリングを続けた。ある時は浜崎、ある時は篠原に助言を求め、疑問があれば加藤に質問を投げた。
紆余曲折を経て、無事にエンジンカバーのモデルが完成し、要件1件ごとに確認書を作成する。
完成したことを加藤に連絡し、確認書と共に3Dモデルを確認してもらう。この時間が一番緊張するのである。
「問題ありませんので、このデータをもとに型を作成し試作に入ります!ありがとうございました!」
ふぅ、と野々村は胸をなで下ろした。
それから数か月後、野々村がコネクティングロッドのモデリングをしているところに、加藤がエンジンカバーを抱えてやってきた。
「おかげさまで試作品が完成しました。実物を見てください。かっこいいでしょう」
野々村は受け取ったエンジンカバーをまじまじと見まわしながら言った。
「かっこいいですね!3Dモデルではあまり実感できない大きさや重さ、表面のシボを確認できて嬉しいです!」
このエンジンカバーは今後さらに改良され、完成したエンジンカバーがお客様のもとに届けられるという。
自分が携わったものが世の中に出るということはものすごいやりがいがあるなと思いながら、
野々村は今日もモデリングするのであった。
~完~
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